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【意味が全然変わる?】文学部院卒が教える!句読点の上手な打ち方。【多い人はダメ?】

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句読点の打ち方って、難しいですよね。

学校でちゃんと習ったこともないので、なんとなく、フィーリング「、」「。」を打ってしまいがちです。

ですが、実は句読点ってとても重要な文の要素なんです。

今回はどうすれば読みやすく、素敵な文章にするための句読点を打てるのか、句読点の持つ力などについてご紹介します!

句読点とは

句読点とは、句点「。」読点「、」の総称のことです。

「くとうてん」と読みます。「くどくてん」ではありません。

これは覚えるしかないですね。日本語ってややこしいです。

 

句読点がないと文章をどこで切って読めばいいのかがわからず頭の中に内容が入って来づらいですよねこんな風に呪文みたいになってしまいますこれじゃ読む気もしませんね

 

 

なので、適切な位置に句読点を打ってあげて、読者に「息継ぎ」する間を与えてあげる必要があります。

「句読点」は読者への思いやりなんですね。

 

句点と読点

「。」と「、」のどっちが「句点」でどっちが「読点」か混乱することってありますよね。

これは簡単に覚えられます。意味を考えればいいんですね。

「句の終わりを表す点」が「句点」=「。」

「読みやすくするために添える点」が「読点」=「、」

と覚えてみてください。

 

句読点のルール

実は句読点のルールってすごく曖昧なんです。

明確に、ここに打っちゃダメ!ここに打て!というルールは定まっていないんですね。

例えば、かっこの中の文章なんかには2パターンがあります。

(こういう風にかっこの中に句点を打つパターン。)

(かっこの外に句点を打つパターン)。

どっちも見たことがありますよね。文章の性質や、かっこを使う場面によって異なります。正しさというものはあまりないような気もします。

読みやすければ正義!ってわけですね。基本的には文章内で統一できていれば、違和感はありません。小説や書籍を読んでいても、色んなパターンの著者がいます。

 

鍵かっこについても同様です。

「中に句点を打つパターン。」

「句点を打たないパターン」

これもどちらも正解です。小説では著者によってどちらも見受けれます。

基本的には、余計な句読点はない方が美しいので、必要ないと感じれば鍵かっこの中には付けない方が一般的でしょうか。しかし、こだわりを持ってつけるのであれば、それは一つの個性なんです。

 

句読点によって文章の意味が変わってしまう話

「黒い目の綺麗な女の子」という有名な文章をご存知でしょうか?

井上ひさしさんという小説家が提唱した、句読点の力を表した文章です。

実はこの「黒い目の綺麗な女の子」というシンプルな文章には、18通りの意味があるというんです。

試しに読点を打ってみましょう。

 

「黒い目の、綺麗な女の子」

目が黒くて、容姿の綺麗な女の子が思い浮かびますね。極々自然です。

では違うところに打ってみましょう。

 

「黒い、目の綺麗な女の子」

こうするとどうでしょうか。肌が黒く、目が美しい女の子が思い浮かびます。

さっき思い浮かべた女の子とはまるで別人ですね。

もっと別人になる読点の打ち方があります。

 

「黒い目の綺麗な女の、子」

どうでしょうか。黒い目が綺麗だということが「女」という部分を修飾しています。そんな女の、子。子供の方はなんだか想像しづらいですね。何も修飾されていないからです。さっきまでの文章と違って、登場人物が二人になりました。

 

「黒い、目の、綺麗な、女の、子」

最大では4つ、読点が打てそうですね。

ここまでくるとちょっと意味は伝わりづらいですが、一応可能です。

このように、読点の位置を変えていくと、18パターンの意味が出てくるのです。

試しに羅列してみましょう。

 

「黒い、目の綺麗な女の子」

「黒い目の、綺麗な女の子」

「黒い目の綺麗な、女の子」

「黒い目の綺麗な女の、子」

「黒い、目の、綺麗な女の子」

「黒い、目の綺麗な、女の子」

「黒い、目の綺麗な女の、子」

「黒い目の、綺麗な、女の子」

「黒い目の、綺麗な女の、子」

「黒い目の綺麗な、女の、子」

「黒い、目の、綺麗な、女の子」

「黒い、目の、綺麗な女の、子」

「黒い目の、綺麗な、女の、子」

「黒い、目の、綺麗な、女の、子」

 読点で区切れるのはこの14パターンですね。

あとは修飾語が二重にかかる場合などを考えて、18パターンあるというわけですね。

読点の力が、実は非常に重要だということがお分かりいただけたと思います。

 

句読点を打つコツ

ここまで来て、「句読点難しくてめんどくさいな。。」と思った方、大丈夫です!

句読点を打つのに、コツのようなものがあるんです。

句点は基本的に場所がわかると思います。文章の終わりに打つだけですからね。

問題は読点です。

読点を打つコツは、「文章のブロックを意識して分けてあげる」ことです。

 

先ほどの例で考えてみましょう。

まず、自分の伝えたい情景・情報思い浮かべます。

ここが一番大事ですね。何を伝えたいのか考えないと、読点を打つ位置が定まりません。

目が黒くて、容姿の綺麗な女の子のことを伝えたいとします。

伝えたい情報は大きく分けて2つですね。

①「目が黒い」ということ

②「女の子の容姿が綺麗」だということ

この二つを、ブロックに分けるように読点を打ってあげればいいんです。

そうすると、「黒い目の、綺麗な女の子」という風に読点を打てばいいとわかります。

読点は「/」(スラッシュ)「#」(ハッシュタグのようなものです。

動画や投稿の、タグみたいに考えればいいんです。

「#黒い目 #綺麗な女の子」

ブロック分けして、その間に「、」(読点)を打ってあげると考えれば、少し簡単になった気がしませんか?

 

意味だけじゃない、句読点の力

実は、句読点には今まで述べたような「意味」を変える力だけではなくて、もう一つの力があるんです。

それは、「文章にリズムをつけてくれる」ということです。

実は人は文章を読んでいるときに、無意識にリズムを取っているんですね。

それは「息継ぎ」のようなものです。

難しい言葉や難読漢字がずらっと並んでいる文章って、息苦しくなりますよね。

文章は言葉です。言葉は会話です。口を開いたり、耳で音を感じなくても、人は文章を読むときに会話をしているんです。

だから、「文章のリズム」というのはとても大切な要素なんですね。

 

文章のリズムを考えるときに、分かりやすいのが俳句や短歌です。

俳句や短歌って、リズムをつけて文章を読みますよね。昔の「歌」ですから。

飯田蛇笏(いいだだこつ)という俳人の俳句を例に考えてみましょう。

 

おりとりてはらりとおもきすすきかな

全部ひらがなの俳句なので、何も区切りがないとすごく読みづらいですね。

全部で17文字なので、声に出してみると自然に俳句調にはなると思います。

しかし、ぱっと見では少し分かりづらいです。

 

おりとりて、はらりとおもき、すすきかな

 読点を打ってみると、これは間違いなく俳句として読めますね。

俳句のリズムは日本人に染み付いたリズムなので、心地よく感じます。

さらに漢字やカタカナを混ぜてみれば、現代ではより読みやすく、意味の分かりやすい文章になります。

 

折り取りて、ハラリと重き、ススキかな

 俳句としては風情がなくなってしまいましたが、文章としては読みやすくなりました。現代っぽくとっつきやすい文章ですね。

ちなみに意味は、

ススキの穂は、見た目には軽そうだが、折り取って手に持つと、思いがけない重さだ。見た目には感じない、生命の重さに感動している。

といったものです。

 

このような俳句や短歌に見られる「5・7・5・7・7」のようなリズムを、「七五調」と言います。

七五調で区切ればいいというものではありませんが、こういうリズムを日本人が好むということは覚えておくと、少し文章のリズムへの意識が変わると思います。

 

句読点の達人、太宰治

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6月19日になると毎年、「桜桃忌」というものがニュースになります。

「桜桃忌」とは太宰治の命日のことで、彼の最期の作品「桜桃」にちなんで名付けられたものです。

この「桜桃忌」は知っていても、「桜桃」を読んだことのある人は意外と少ないのではないでしょうか?

その冒頭をご紹介します。

 

子供より親が大事、と思いたい。

 太宰らしいクズっぽい内容ですが(笑)それはさておき、この文章のリズムを考えてみます。

これ、口に出して読んでみるとわかりやすいですが、17文字の俳句調になっていますよね。

試しに読点を変えてみると、

 

子供より、親が大事と、思いたい。

 こうなります。

すごく俳句っぽくなりましたね。

でもこれだとなんだか冗長な感じがします。

太宰治はこの俳句調の文章を、読点を使って意味のブロックに分け、あえて文章っぽくした訳ですね。

口に出すと俳句調、パッと見は意味のわかりやすい文章。

非常に味のある読点の使い方ですね。

 

太宰治は、句読点の達人と言われています。

ものすごく読点が多い「女生徒」という作品の一部をご紹介します。

 

 あさ、眼をさますときの気持ちは、面白い。 かくれんぼのとき、押入れの真っ暗い中に、じっと、しゃがんで隠れていて、突然、でこちゃんに、がらっと襖をあけられ、日の光がどっと来て、でこちゃんに、「見つけた!」と大声で言われて、まぶしさ、それから、へんな間の悪さ、それから、胸がどきどきして、着物のまえを合せたりして、ちょっと、てれくさく、押入れから出て来て、急にむかむか腹立たしく、あの感じ、いや、ちがう、あの感じでもない、なんだか、もっとやりきれない。 箱をあけると、その中に、また小さい箱があって、その小さい箱をあけると、またその中に、もっと小さい箱があって、そいつをあけると、また、また、小さい箱があって、その小さい箱をあけると、また箱があって、そうして、七つも、八つも、あけていって、とうとうおしまいに、さいころくらいの小さい箱が出て来て、そいつをそっとあけてみて、何もない、からっぽ、あの感じ、少し近い。

すごい読点の数ですね。読んでみると、リズムが心地いいです。

たくさん読点を打てばいいとというわけではありませんが、自分なりの心地よいリズムを探しながら、読点を打ってみてください。

 

「桜桃」「女生徒」もとても面白く、美しい文章が読める作品ですので、是非読んでみてください。 

 

まとめ

いかがだったでしょうか?

句読点、奥が深いですね。。

意味のブロックを意識して、それを囲ってあげながら、リズムを取る。

文学の巨匠・太宰治の文章を参考にしながら、自分なりの句読点の打ち方を見つけてみてください♫

 

 

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